1.日時 平成22年1月27日(水)14:30〜21:00
2.場所 東京ミッドタウン5F インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター
3.参加者 8名(38名)
4.プログラム
<1> 14:30〜17:50 「デザインの新しい課題」:
ユニバーサルデザイン総合研究所 代表取締役所長 赤池学氏
<2> 18:00〜18:50 ゲストスピーチ「デザインの現場から」:
株式会社イマージュ 代表取締役社長 田山修一氏
<3>19:00〜20:30「新しいデザインアプローチ」(公開講座)
リーディング・エッジ・デザイン代表 山中俊治氏
<4>交流会
5.内容
<1>デザインの新しい課題まず始めに赤池氏の自己紹介がありました。

次に、ユニバーサルデザイン総合研究所が作成した「ユニバーサルデザインを定義する10要件」の説明がありました。(5以下は詳しく説明がありました。)
1)セーフティ(安全性)
2)アクセシビリティ(接しやすさ)
3)ユーザビリティ(使いやすさ)
4)ホスピタリティ(慰安性)
5)アフォーダビリティ(価格妥当性):コストの面でも接しやすくする。
6)サステナビリティ(持続可能性):環境対応、エコデザイン、サステナブルデザイン。
7)エキスパンダビリティ(拡張性):商品のバリューが拡張していくデザイン。
8)パーティシペーション(参画性):ユーザーを商品開発の初期の段階から参画させる。高齢者や医療関係者等、小売業者も含む。
9)エステティック(審美性):できた商品には美しさがなければならない。
10)ジャパンバリュー(日本的価値):日本人が譲りわたすべきでない価値を意識したデザインする。
次に、21世紀のデザイン品質についての説明がありました。
今までの日本は高機能や高品質・低価格の3つの価値軸でものづくりをしてきました。しかし、その価値軸はサムスンのような韓国や中国等のメーカーに抜かれつつあるのが現状です。そこで、新たな価値軸となるのが「五感と愛着に基づく品質(sense ware)」です。五感や心に響くものを機能と一緒にデザインすることです。
さらに、「公益としての品質(social ware)」地域のため、地球のためという品質が重要です。
つまりこれからのものづくりは、機能を生み出すhard wareと使い勝手を生み出すsoft ware、愛情や愛着・愛嬌を生み出すsense wareと新しい価値やビジネスモデルを生み出すsocial wareという4つの品質を循環させながら螺旋的構造の上に行う必要があります。
次に、21世紀のデザイン品質を事例をもとに説明がありました。
■
株式会社コラボのWILLシリーズ、ライトシリーズ:握力の弱くなってしまったお年寄りなどにつかいやすいプロダクト
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山形伝統工芸:伝統工芸を活性化させるとりくみ
■Haptic Paper :日本の先端技術を応用したデザイン
■
黒いまな板(京セラ):視覚障害者にも素材の視認がしやすいまな板
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ダイヤログ・イン・ザ・ダーク・タオル:健常者にはない繊細な感性から生まれたタオル 、感性価値がバリューになった事例
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イルカ人工尾びれプロジェクト (ブリヂストン)
次に、ユニバーサルデザイン総合研究所が経済産業省と共に行っている、キッズデザイン協議会についての説明がありました。
調査研究活動として、安心・安全知識の循環型社会をつくる調査研究事業を行っています。具体的には、病院に運び込まれてくる子供の重篤事故の発生状況をヒアリングし、その対応をデータベース化しています。
また、子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン、子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン、子どもたちを産み育てやすいデザインを基本理念として、ベストプラクティスを敬称するキッズデザイン賞を主催しています。
次に、キッズデザイン賞の事例紹介がありました。
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キンダーマーカーたふっこ■乾燥剤
■ビニールプール
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ニコン ネイチャースコープ■
オリンパス ミュー■
ドクターベッタ哺乳びん■
入院患児のためのプレパレーション用絵本等
次に、サステナブルデザインについて説明がありました。
気候変動によって起こる結果を説明し、現在起きているリスクの説明がありました。
森林面積の急激な減少やサンゴ礁が大規模に死滅等。
それらに対するソリューションとしての事例紹介がありました。
■新丸ビルの再生エネルギー使用:全てのエネルギーを風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの再生可能エネルギーにより発電された電力に切り替え。
■完全密閉型植物工場システム
■東京ガス エネファーム(パナソニック株式会社製 )
■家庭用高濃度人工炭酸泉製造装置《ソーダバス》
■アワフキムシのシェルターと無水風呂(INAX):超節水のお風呂
■Actyes<アクティエス> (サンウェーブ):カスタマイズを意識したユニバーサルキッチン
■自動車:トヨタ iQ、インド タタ・モーターズ ナノ、シムドライブ(慶応大学発ベンチャー企業) エリーカ
■クィーンズメドウ・カントリーハウス(QMCH)の馬付住宅(馬100頭)プロジェクト
等
次に質疑応答がありました。
■ユニバーサルデザイン総合研究所は沢山の業務を抱えていますが、どのように仕事を回しているのでしょうか?
正社員は14人しかいません。200人程の客員研究員のネットワークをもっています。プロジェクトによって、そのなかからドリームチームを組織して進めており、ファシリテーターとして研究所が入っています。
■CO2削減、低炭素というキーワードが現在の主流ですが、これからはどのようなことが主流になるのでしょうか?
水のカーボンフットプリントが重要になります。
低炭素でも、他社が深堀してこなかった新しいバリューをデザインすることが重要です。
最後に、エコデザイン研究所が作成した「
エコイノベーションで実現するサステナブルなライフスタイル絵巻」について紹介がありました。
<2>ゲストスピーチ「デザインの現場から」まず始めに、田山氏の自己紹介がありました。

次に、株式会社イマージュの業務紹介がありました。
1991年から始まり、会社のロゴ、CMやゲームムービー、映画のCG、アミューズメント(パチンコ)ムービー、webのコンテンツなどの作成を行っています。
次に、CMやゲームムービー、VFX、アミューズメントの映像を観覧しました。
<3>「新しいデザインアプローチ」まず始めに山中氏の自己紹介がありました。

東大の機械工学科に在籍しながら、スポーツ漫画を描いていました。
機械工学と漫画のワクワク感を両立できるのがプロダクトデザインでした。
日産自動車に就職し、その後独立しました。
次に、山中氏のデザインしたプロダクトについて紹介がありました。
■ISSEY MIYAKE OVO
■OXO Kitchen Tools
■ロボットプロジェクト
■Tagtype
物の形(シルエット)を描くのは最後にしています。コンポーネントレイアウトから先に考え始め、そこから美しい配置(合理的)を考えます。これはマンガでも一緒です。シルエットだけだとうまく描けず、骨格をとらえていくとうまく描くことができます。
構造認識が形を生むという感触です。
その事例がコクヨオフィスチェアー「Avein(アヴェイン)」です。
イスを使用する際の様々な姿勢にあわせられる、つまりダイナミックなフィットを埋め込む方法はないかと考えました。そこで出たアイデアがエアブローという考え方です。沢山のクッションが細胞のようによりあつまりそれが有機的につながっている流れを持ったイスです。
次にロボットプロジェクトについて事例を基に詳しい説明がありました。

働かないロボットを研究する理由として、ロボットの魅力は本当に役に立つところにあるのだろうかと考えたからです。ASIMOやAIBOが喜ばれる理由は、生きているものを作ってしまった感があるからです。
ロボティクスのアプローチとしては、パイオメティクスというような、生物のしくみを丁寧に研究して、それと同じことをマシンにおきかえて、生物のシミュレーターをつくります。これが正攻法なロボティクスです。
しかし、人が生き物っぽいと思えることは、それとは直接関係ないかもしれません。生き物のしくみをシミュレートしなくても、反応やアピアランスだけで生きているっぽさをだせるのではないかと考えました。それを鮮鋭化したマシンをつくっています。
■サイクロプス
■Ephyra
■Flagella
次に「デザインの骨格」展について説明がありました。
プロダクトデザイナーは外観を意識するばかりに、構造体を隠してしまいがちです。ハイテクになればなるほど構造体を隠してシンプルにみせたほうが親切だと思っています。
本当にそうなのでしょうか。構造体がみえる喜びを考えてみたいと思いました。
シンプルであることと、装飾的であることは形を隠そうという点においてはおなじことではないでしょうか。それによって親切だとか親切でないといえるのでしょうか。
シンプルでわかりやすいデザインは構造体を隠した結果、外観がシンプルに見えているだけではないでしょうか。構造体そのものをデザインすることを常に意識しています。
■弓曵き小早舟
■on the fly
次に、デザインエンジニアリングを考えるときに大切にしている心がけについて紹介がありました。

■人間を中心において、人と人工物のあいだにおこるあらゆることを設計するつもりで行います。
エンジンは設計しません。しかし人間が接する部分はどこであろうと恐れず設計をしようと思います。
■機能優先か、デザイン優先か。ここで使われるデザインは見栄えのことです。つまり、見栄え優先か、機能優先かという議論は、デザイン作業のなかで決定されるべきことです。
デザインと機能、どっちを優先するかという議論自体がおかしいです。形をつくることだけがデザイナーの仕事だとすること自体がおかしいです。
■科学は得た知識を皆で共有できてこそ意義があります。だれがやっても同じ結果が得られた場合に科学と認められます。
芸術は、共感を得るために進めますが、その共感は必ずしも客観ではありません。むしろ主幹どうしの認め合いです。人々が共感してもしなくてもそれは芸術となります。
科学は事実にそった記述で真実を導き出しますが、芸術は主幹の中から真実を生み出します。
方法論は違いますが、目指している部分は同じであると考えます。
科学は客観的な方向で真実を探りますが、芸術は主幹という方法で自分達の直感を信じながら真実を探しています。接点が得られたときに正しいものが生み出されます。
それぞれの方法論を駆使しながら接点を探す。これがデザインの完成形を目指すときのヴィジョンではないかと考えます。
しかし、現段階で主観的に真実だと感じる美を、科学が客観的に成立させる方法は見つかってはいません。なので、美意識が先導的であることを認めようと思っています。
美しいという感覚は大事にしようと思っています。
その美意識を核にしてヴィジョンを組み立て、そこに実験と検証で生活に根付いていくようなスタイルを与えていくことが、デザインエンジニアリングの方法論であると理解しています。
最後に質疑応答がありました。
■プロダクトデザイナーとして、工学的・数学的な部分を強化しなければいけないことは理解していますが、今の段階からそのエキスパートになるのはなかなか難しいです。それは、エンジニアの側に立っても同様であると考えますが、どうすればよいのでしょうか。
重要なのは、両方を持っていることです。たとえ、それぞれのエキスパートがコラボレーションをしたとしても、限界があります。そこで、重要なエッセンスをつかむことが大切です。バッテリーでいえば、バッテリーの仕組みを理解する必要はありません。バッテリーは液体として扱うことができることを知っていることで、デザインを前に進ませることができます。そういうようなエンジニアリングの直感的理解があると、エンジニアと話ができるようになります。
■エンジニア側はどうすればよいのでしょうか?
デザイナー達が共通する感覚というのは歴然とあります。そこに踏み込まないと理解することはできません。いいよねと思えるものかっこ悪いと思えるものに沢山触れ、自分の感覚を研ぎ澄ませて行くことしか方法はありません。言葉にたよらない感覚を深める必要があります。

<4>交流会